TOPICS お知らせ

2025.12.23

闘病記その2―リハビリ奮闘〜退院④

闘病記 その2―リハビリ奮闘〜退院④
阿知波正人
 
 作業療法のリハビリでは上肢のいろいろな動きのトレーニングを行うが、手の巧緻運動のリハビリが長く行われた。これにはコインを複数枚手に持ち、これを1枚ずつ細い隙間に入れるというものがある。自動販売機にコインを入れる要領である。複数枚、例えば4枚持った状態で1枚ずつ隙間に入れるとすると、薬指と小指を屈曲させ、この2指で3枚のコインを固定し、他の3指でコインを隙間に入れる。次の1枚を取り出すために残りの2枚を薬指と小指で固定し、1枚を隙間に入れるという動作がある。これが最初は薬指と小指がうまく屈曲できず、さらに他の3指もうまく動かずに相当苦労した。さらに隙間に入れるのもコントロールが定まらず震えるような感じで何とか隙間に入れること出来るといった具合であった。これがコインだけでなくビー玉、おはじき、パチンコ玉と大きさと厚みが違うものをコインと同じように行う。何日かかけて何回かトライするうちに徐々にできるようになってくる。次にこれを約30センチの高さの隙間に入れる。その次に約50センチの高さの隙間に入れる。高くなればなるほど、指がうまく動かず、かつ手自体が重く感じた。これを何回か繰り返したが、なかなかうまくいかなかった。ある時、低い位置と高い位置での指の感覚と動きの感じを比べてみると、高い位置のほうが手全体が重く感じ、指の動きもゆっくりでうまく動かないようだった。高い位置で良くないということは前鋸筋に問題があり、肩甲骨が固定されていないかもしれないと推測を立てた。そこで肩甲骨を固定できる方法として、健側の左手を前から回して、患側の肩甲骨下角を抑え多少なりとも肩甲骨を押さえて固定した感じで、右手の感覚を診た。すると低い位置と高い位置の感覚と動きにほとんど差はなかった。そこで、前鋸筋の筋トレを強化した。すぐに結果は出なかったが、しばらくすると高い位置でも重さや動きの悪さをほとんど感じなくなった。
 作業療法には簡易上肢機能検査(STEF)というものがあり、日常生活動作を模した10種類の課題を行い、手や腕の動きの速さを点数化して上肢の機能回復を評価する検査である。ソフトボール、立方体、積み木、釘など、大きさ・形・重さ・素材の異なる10種類の物品を使い、つかむ、移動する、離すといった動作を行い、各課題の所要時間を測定し、結果を点数化(100点満点)して、健常者や健側との比較や、回復の経時的な変化を確認する。これが救急病院に入院中は左(健側)94点に対し、右(患側)65点。リハビリ病院に入院時(9/12)は左(健側)100点に対し、右(患側)94点、10/4は左(健側)99点に対し、右(患側)99点と点数的には合格点になった。しかし、かかった秒数を健側と患側を比較すると2秒程度差があり、合格点ではあるが左右差はあるということになる。
 
 日々のルーティンの中に朝の自主トレを取り入れている。始めた頃は6:30頃から始まり、おおよそ40分ぐらいであったが、リハビリが進むことにより足らない筋トレを追加したり、回数を増やしたりして自主トレの時間は1時間30分ぐらいになった。メニューはリハビリの先生からアドバイスを戴いたものや、自分でこれが有効かなと思ったものである。具体的には抹消から脳への感覚入力として手指、足指への素早い刺激、関節、腱から脳へ刺激を入れるために打腱器で叩打する。筋トレとして座位で膝関節を伸展させる大腿四頭筋の運動、同じく座位から股関節を屈曲させる腸腰筋の運動、座位から大腿を少し持ち上げ足底を浮かした状態で爪先を上げたり踵を上げたりする前脛骨筋と腓腹筋の運動、同じく足底を床に着けた状態でつま先上げと踵上げ(当初、宙に浮かしても、足底を床に着けても足の背屈底屈はほとんどできなかった。そこで、下腿三頭筋のトレーニングとして、踵をあげるように力を入れ、同時に腓腹筋が短縮するように手で起始を近づけ、踵が浮くようにする。前脛骨筋のトレーニングとして、タオルを足のMPの足底側に当てつま先を上げるように力を入れ、同時にタオルを引っ張りMPが浮くようにした。そして9月下旬頃から少しずつ動くようになってきた。)スクワット、ベッドからゆっくり立ちゆっくり座ると言うスクワットの変形、立位で壁から50〜60センチ離れて立ち、両手掌を壁に着けて行う腕立て伏せ、仰臥位で臀部を持ち上げる大殿筋の運動などである。その後、前脛骨筋、長母指伸筋、その他の足の指伸筋、後脛骨筋、腓骨筋、ヒラメ筋、膝窩筋、中殿筋、小殿筋、内転筋、ハムストリング、股関節内旋筋及び外旋筋、前鋸筋、三角筋前部・中部・後部、棘上筋、肩関節外旋筋、菱形筋、上腕三頭筋、腕立て伏せなどを順次追加していった。
 作業療法のリハビリ時に単独の動きはできても複合した動きはできないことがあると聞いた。例をあげると上腕三頭筋は単独で運動するのはあまり問題ないが、肩関節を90度屈曲、90度内旋位、肘関節90度屈曲位から肘関節の進展屈曲を繰り返すと、肘関節のスムーズな運動はできなかった。この複合した動きもトレーニングすることにより、スムーズな動きは可能になった。日常生活の動きはこのような複合した動きの連続なのだろう。
 さらに、作業療法の先生から脳血管疾患の場合、患側は問題なく使えても、筋線維にゴミみたいなものが沈着してくると聞いた。これで思い出したことがある。かつてナショナルカイロプラクティック大学に解剖実習に行ったとき、私たちのチームの検体の一側の大腿四頭筋が完全に脂肪化していた。筋の形状、筋線維の感じなど健側と変わらないが、健側の四頭筋の色は完全に黄色くなって脂肪そのものに編成していた。この話を作業療法の先生に話をしたら、患側の筋線維に沈着するゴミは筋線維の一部が脂肪化しているのだろうということであった。これを防ぐためには、ただ問題なく使えるだけではなく、ある程度の負荷をかけることが必要であるとのことである。この負荷は上肢は腕立て伏せ、下肢はスクワットが有効であろうとのことであった。ということは、わたくしは腕立て伏せとスクワットはこの先ずーっとやらなければいけないことが確定した様なものである。